忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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一時間SS参加作品 

・タオル


両親が忙しい我が家において、洗濯は私の役目。

「ほらっ、とっと洗い物だして!」

「えー、いいよー」

 とんでもない事を言う弟をチョップで黙らせ、ほったらかしになった衣類を大きな籠に入れていく。

「……結構、普通だね」

「何が」

「今日で、その、最後じゃん」

「だからって、溜まっていく洗濯物は待ってはくれないの。見なさい外を」

 弟の部屋から差し込む陽の光は早くシーツやら何やらをふかふかにしたくて仕方がないといわんばかりに燦々と輝いている。

 ……そんな土曜日の昼間だ。門出もいい天気の方が良いに決まっている。
 まだ何か言いたげな弟の表情に、ははあ、と顎に手をやって見せる。

「何なの? もしかして告白したりしたかったの?」

「ち、ち、違う違う!」

「もー分かりやすいんだから~。でも駄目よ~そんなことしたら。本家から何言われるか分かったもんじゃない」

「ほんとに違うってば!」

「わかったわかった……よいしょっと」

 赤らむ弟をあしらいながら部屋を出ようとすると、こんな声が背中に投げられた。

「姉ちゃんこそ、色々話すことあるんじゃないかなって……」

「……」

 両手で籠を持ち直し足で扉を閉めた。





 洗い終わった洗濯物を再び抱え、庭に出る。
 住んでいる人数に対して不相応に広い庭。それでも物干しに使うスペースはたかが知れている。立っているのは普通の物干しだ。

 一つずつ皺にならないように丁寧に吊るしていく。干すのは洗濯のハイライト。長年この家で従事してきた身として、この行為は生活のリズムの一つであり、楽しみになっていた。

「っと。さ、タオルだ」

 いつもタオルを干すのは最後だ。少し、気合いがいるからである。

 一つを手に取り、半分に折る。

「……はっ!」
 
 横に五回、バタバタっと強く振り、表面を逆目に撫でる。
 こうして干すことで、ふんわり感が断然違うのだ。お風呂後にこのタオルに顔をうずめるのは至福の時間である。

 父、母、私、弟、と来て、『もう2枚』のタオルが、籠に残った。

「……」

 なんとなく、物干し場の向こう側、離れの建物に目が行く。


 言いたいこと? そんなもの山ほどあるに決まっている。


この家で共に9年近くの長い時を過ごしたのだ。『彼女』とはもう姉妹のような感情に近いものが生まれている。

 だけれども、最初の無邪気に触れあっていた頃とは、事情が違う。自分の家の事、自分の立場、弟の立場、本家の立場、『彼女』の立場……見えたくもなかったものが色々、見えるようになってきてしまった。

 次第に離れていく距離、否、自分が遠ざけてしまった色々な事。そんなもやもやは何も進展することを見せずに、『彼女』達は今日発ってしまう。 

「……」

 薄い上品なえんじ色のタオルを手に取る。自分の家族と違わぬ手順でバタバタと振り、半目に撫でる。

「あ」

 気がついてしまった。『彼女』達は、今日、発つのだ。

「必要、ないじゃん……」

 自分の間抜けさ加減と、他の色々なものが頭を駆け巡り、鼻の奥に何だかツンとした痛みを覚えさせた矢先、


「その振りが、ふわふわの秘訣だったのですね」


 少しいたずらっぽく笑う、しっとりとした声が掛けられた。


 驚き、振り返った先には果たして、いつから座っていたのか、旅支度を整えた『彼女』が穏やかな笑みを称えて縁側に腰かけていた。





・タオル   了


企画元サイトはこちらです。 http://ss1hour.wiki.fc2.com/
( 2010/04/16 23:10 ) Category SS | TB(0) | CM(0)
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