忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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第七回一枚絵で書いてみm@ster・参加作品 

・冒険:熱砂行

描き07up


 鳥取砂丘においてもっとも留意すべきは「砂白鯨」の存在である。
 その上空を通過せねばならぬ時は、かならず先にかの砂白鯨の回遊ルートを計算に入れた上で、決して遭遇せぬよう、船を航行させる必要がある。

「で、それを怠ったから、こういう事態になっているんですね」
 如月千早は、極力怒りを抑えたつもりで問いただしたつもりだった。緊急事態に取り乱してはいけないと強く自制したからだ。
「あらあら~」
 しかし、しかしだ。この人……船の主である三浦あずさは取り乱すというよりも緊張感が皆無であった。
「おかしいわね~。ルート取りはちゃんとしたのよ~。くじらさんの上を通らないように、一回大きく右に~」
「そこで思いっきり舵を左に回しましたよね!?」
「……あら~」
 ツッコミを入れる余裕は正直なかったが口から出てしまった。本当に悠長なことを言っている場合でない。

 この船は眼下に遥か広がる砂の海に叩きつけられようとしているのだから。

 「大地」は全て毒された砂に帰り、人はその生きる基盤を空に求めた。

 もはや言い伝えでしか知られることのないこの世の理。
 人は空に浮かぶ島で暮らし、その間を船で行き来した。


 如月千早も例外なく、空で育った少女である。
 身よりがなく、親類に育てられた彼女は15歳の誕生日に自らに課せられた運命を知る。

『アイドルマスター』

 ただ言葉だけの概念しか知らぬものを手に入れるという数奇な運命に抗うことは叶わず、冒険の世界に身を置くことになる。

 今回はとある筋から『アイドルマスター』が鳥取砂丘と呼ばれる『海域』にあるかもしれないという情報を頼りに、この地域の腕利きの船乗りであるという三浦あずさの駆る船で、探索を開始していたのだ。




「腕……利き?」

 千早はひきつった笑みで自問した。
 思いっきり砂白鯨の噴出する砂弾の射線上に飛び込んで船の動力源を見事に撃ち抜かれて落ちるのを待つしかない、この船のキャプテンが、腕利き?
 今はまだ『浮魔力』が残存している為に緩やかに前進しているが、高度は間違いなく下がっている。
 残存量を示す頭上のメーターが0になった時、船は糸を切られたかのように落下を始めるだろう。

「どうするつもりなんですか……あずささん」
「そうね~」

 考えているのか、いないのか。はっきりしない態度に千早は一層不審感を募らせる。

「船長~いるか~」
「失礼します」
 船の操舵デッキを訪れたのは、道中道づれでこの船に乗り合わせることになった二人の冒険者だった。
「自分のカンによれば、この船はもうすぐ沈むな! うんうん!」
 日焼けした肌はいかにも活発なイメージ、そして裏表のなさそうな屈託のない、悪く言えばアホっぽい笑みを浮かべる、我那覇響。
「これでは予定の航路を進むのは不可能ではないかと」
 落ち着き払った物腰。真っ赤でふわふわしたドレスに身を包み、この暑さに汗の一筋も流さぬ表情、長く伸ばした銀髪がまた場違いなまでに輝く、四条貴音。

 千早一人では埒が明かなかった事態に、おそらく場数も相当数踏んでいると見られる二人の登場は有難かった。なんとしてもこの優柔不断な船長に意見してもらい、協力して解決に立ち向かうのだ。

「そうですねー、このお船はもうダメかもしれませんね~」
「そっか、じゃあ自分はここでバイバイするぞ」
「んなー!!!」
「如月千早、冒険者たるものエレガントを忘れてはなりませんよ。私もこれで」
「そ、そんな、お二人とも乗っている船が落ちそうなんですよ!」
「もー、千早は甘っちょろいなー、死にそうになったらとっととトンズラ。冒険者のキホンだぞ!」
「響ちゃん、貴音ちゃん、気をつけてね~」
「はい、船長にも幸運があらんことを」
「あらんことをっ!」
「あらんことを~」
 三人はさも当然のように右手の親指を立て、冒険者達の定番の挨拶を交わす。
 我那覇響と四条貴音は本当にあっさり、デッキから出ていった。後部の格納庫に置いてある一人乗り滑空機に乗っていってしまうのだろう。

 恨みがましく閉じたドアーを見つめる千早の肩に、三浦あずさは手を置いた。
「千早ちゃん、千早ちゃんだって、手に入れたいものがあるから、冒険しているんでしょう?」
「・・・・・・はい」
「この空と砂の間ではね、みんなが一緒なの、何よりも自分が自分の欲しいものを手に入れる為に、みんな冒険しているの。それを否定することは、御法度なのよ」
「……」

 如月千早は、理解した。
 少なからず自分がこれまで経験してきた冒険においていずれもが、自分一人の力では何もできなかったからだ。一人では立ち向かえない大きな冒険を仲間と共に成し遂げる。そこに自分は充足感を感じていたのだ。

 孤独から飛び出す前の、寂しい自分。

 でもそれでは、この世界の全ては切り開くことはできない。
 三浦あずさはやんわりとそれを指摘してくれたのだ。

「……ごめんなさい」
「いいのいいの~……千早ちゃんが

 バカン

 突如、千早の目の前の光景が三浦あずさごと、「後ろに下がった」感じがした。

「え」

 彼女らの乗った船が真っ二つに割れ、ちょうど操舵デッキの中心から対照に立っていた二人の間を割いた形だった。

「なっ、なっ、なー!!!!」
「千早ちゃ~ん、落ち着いて~」
「無理! これは絶対に無理~!」

 『ズレ』ながら落下しはじめる船体に身を置いている事実の前には、先ほどの理屈云々等は関係なかった。





『貴音、見たか今の?』

 電気掃除機のようなフォルムの滑空機にまたがる四条貴音に、響から通信が入る。
 先ほど船を出た二人は高度の空に舞い上がり、この海域から安全に離脱する為のルートを見極めようとしていた。

 その矢先、眼下の船が『斬られた』

「はい、確認致しました。間違いなく砂白鯨ではありませんね」

『そっか~、じゃあどうする?』

「無論、これより私は戦闘機動に入ります」

『うひゃあ~、容赦ないなあ』

「響、あなたもですよ」

『なぬ!?』

「契約を忘れましたか。互いの仇を打つ時には全力で協力すると」

『それは……貴音の仇の数を聞く前に軽く言っちゃった、ノーカンだぞ!』

「なりませぬ。第一、響の仇は私の国にいるのではありませんか」

『ううっ』

「議論している暇はありません。三千仇打ちのヤーネフェルト、参ります!」

『あと2500回以上もタダ働きはいやだー!!!!』




「え」
「千早ちゃん、しっかりつかまっててね~」

 自分の置かれた状況を、千早はうまく理解できなかった。
 どんどん離れていくかと思った三浦あずさの姿が突然眼前に現れ、しっかりと抱きしめたからだ。
 圧倒的な質量を誇るあずさの胸部に完全収納される千早の頭部。

 なんだろう、緊急事態なのにこの心から湧き出る感情は……?

「くっ!!!」
「あらあら~我慢しててね~」
「へ、あずささん一体何をわぷぷっ!」

 跳躍。という感覚だけはわかった。
 顔を胸にうずめられている千早には何がなんだかわからない。
 何かを蹴っては飛び、蹴っては飛びを繰り返している。
 さっきまでのんびり事態を笑っていた三浦あずさという人間が、そんなことを?
 混乱の中、ひと際大きく何かを踏みしめて、照りつける太陽の下、体が空を切り裂き上昇していくのがわかった。





「うっわー、あの船長ほんとに人間か?」

『面妖な……』

 船を『斬った』張本人、「砂白鮫(サジロザメ)」を討たんと急降下した響と貴音が確認したのは信じがたい光景だった。

 砂白鮫の突如伸びる鋭利な尾びれに切り裂かれ、崩れ落ちる船の中、少女を抱きしめたままジグザクに残骸を蹴りながら『上昇』する人影だった。あの中にいる人間はもう二人しかいない。

「何かやらかす前に自分達も突っ込んだ方がいいかな……」

『いえ、先ほどからあの二人を中心に面妖な気配が高まっています。万が一の時の為に防御術式を張り、一度やり過ごしましょう』

「面妖って便利な言葉だな……」





「あ、あれは!」

 豊満な胸からなんとか顔を離し、船が航行していた高さよりもはるかな上空から、千早は地上を見て悲鳴をあげた。砂の海から覗く威真っ白な巨体と、今尚船体を切り裂き続けている鉄のような鈍い輝きを放つ刃。
 その刃は、生きていた。

「まずは、安全を確保しないとね~」
「えっ」
「千早ちゃん、私ね、実は」

 そっと耳元でささやかれたあずさの言葉は、唐突で、すぐに意味が理解できないものだった。

 (手に入れたいものは、千早ちゃんなの)

「千早ちゃん、『借りる』わよ!」

 鋭く叫んだあずさの声とともに突き出される千早の左手、それにぴったり吸いつくように、あずさの右手が出される。それと同時に千早の胸の内、何か熱いものが駆け巡り、その感覚に衝撃を覚える。

「あ、熱い……!」
「手を開いて! その胸の熱さをそこに集中させて!」
「う、あ……!」

 熱くて、熱くて何も考えられない。千早はただ、言われるがままに、突き出した手のひらを、開いた。


 灼熱が、暴れる。

 千早とあずさの両の掌が包む空間に、紅く燃える光球が生まれ出でて、千早の視界全てを光で埋め尽くして……。


 千早の意識はブラックダウンしてしまった。
 




 ……まず意識が帰ってきたと同時に口の中一杯に砂が詰め込まれている不快感に、千早は飛び起きた。


「ぷはっ、きゃ、きゃー! 死んじゃう! 死んじゃう!」
「千早ちゃん」
「ああ、まだ見ぬお父さんお母さん、私の冒険はここで終わりのようです・・・・・・先立つ不幸をお許しください・・・・・・」
「千早ちゃ~ん、大丈夫よ~」
「えっ、あっ、あれ?」
「あらあら、砂まみれでおもしろかわいい顔になってるわよ~」

 千早はまず、自分が生きていることを確認し、ここが『砂の海』の上であることを理解し、改めて悲鳴を上げた。

「ど、毒が、毒が回って! あずささん早くどこか避難しないと!」
「だいじょうぶよ~」
「えっ」
「見て見て、どこも、腐食してないでしょ~?」
「あ……」

 そう自分達は『なんともなかった』。砂の海の上に、太陽の下に立っている。
 
 ……ただ、生きている。

「鳥取砂丘海域は『原始の砂』、毒された砂以外の海も、この世界には存在するのよ?」
「そ、そうなんですか……」


 ほんとに、自分にはまだこの世界のことを何にもわかっていないんだ。
 

 千早は、ようやく実感として、そのことが、冒険者としてはひよっこにもなっていないことを分かり始めていた。

「これから、どうするんですか? というより、さっきの怪物は、あと、胸が熱くなったのは……」
「ん~、おいおい、道すがら離していきましょうか~」
「あ、あずささん!」

 存外しっかりとした足取りで歩き始めた三浦あずさに、如月千早はついていくので精一杯だった。

「行く方向って、ほんとにそっちで良いんですか~!?」





「術式を展開して正解でしたね」

『ああ……』

「しかし、驚きましたね」

『貴音、しばらくはあの二人についていった方がよさそうだ』

「ええ、その方が、我々の二人の共通目的への近道になるやもしれません」

『うー、クールに決めちゃったけど、やっぱり合流する~とかちょっとカッコ悪いぞ!?』

「それは、妙案を出していただかないと」

『ずるい! 貴音も一緒に考えろよ~!』

 ぷんぷん怒りだす響をよそに、貴音は眼下の砂の海をもう一度見直した。

 先ほどまで砂白鮫がいた箇所に、巨大なクレーターがぽっかりと、砂の下の『土』を露出させるまで深く開いていた。

「はて……この面妖なる力、あの二人のどちらのものなのでしょうね……」


 そのクレーターから点々と続く足跡二つ。
 滑空機を飛ばせばすぐに追いつくだろう距離を躊躇う程には、さしもの貴音にも『畏れ』の感情が生まれていた。





・冒険:熱砂行   了




企画元サイトはこちらです。 一枚絵で書いてみm@ster http://triskelion.sakura.ne.jp/ichimai-7.htm
お題イラスト提供 百合根P http://siiiiii.blog38.fc2.com/
( 2010/08/22 02:57 ) Category SS | TB(0) | CM(2)
鳥取県は恐いところなんですね。なんと恐ろしい。
行く機会があったら巨大生物に気をつけたいと思います。

色々な設定を過剰な説明無しになんとなく理解させた上で
サラッと進めていくのは良いやりかただなぁ、と思いました。
ファンタジーな展開だけど問題なく理解できちゃう感じで。

ポイントポイントに挟まる笑いも、いい感じでした。
『面妖な』は、まったく便利すぎると思います。
[ 2010/08/23 22:38 ] [ 編集 ]
謎に包まれた世界!地腋肉踊る冒険者の活劇! みてる方も本当に胸が熱くなる
序章ですね 冒険者達かそれぞれの思惑で動きながらも、何か一本の線でつながっていて
壮大な冒険に巻き込まれる予感がプンプンしました。
 なんというか 千早は振り回されて苦労していますが、響も気ままに動いているようで
かなり回りに振り回されてるなぁとw  それだけ貴音とあずささんがマイペース力強い
ということなのでしょうかねぇとw
[ 2010/08/24 20:55 ] [ 編集 ]
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