忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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一時間SS参加作品 

・松葉杖

 
 片方の足は、力なくぶら下がっているだけ。

 松葉杖に身体を預けないと前に進まないことへのいらだち。

 千早は、溜息をつきながら、ゆっくり病院の廊下を歩いていた。



「やーめーてー! 千早ちゃーん!!」

「な、なに?」

 病室に入るなり悲鳴を上げた春香に千早は肩をすくめた。

「よよよよ……」

「と、とりあえずなんでお腹を撫でるの春香……」

「いくら骨折で動けないからって……」

 くわっと春香は真剣なまなざしを千早に向けた。真剣だ。うっかり春香の分のクッキーを食べてしまった時に匹敵する真剣さだ。

「病室で腹筋にいそしむなんて女の子のすることじゃないようわーん!」

「泣くの!?」

「だってえ、だってえ、ドアの前に立ったら『フッ! フッ!』ってすごく充実したエクササイズの吐息が『如月千早様』って可憐な名前が書かれた病室から聞こえてくるんだよ!? がっかりだよ!?」

「よくわからないわ……だって、声を出す練習もできないんじゃ、せめて身体はなまらないようにしないと」

「もーそんなに気を張り詰めてたんじゃ治るものも治らないよ~」

「リハビリは順調よ。むしろ『病は気から』って言うじゃない。強い気持ちを持っていた方が言いに決まってるわ」

「うーん……あ、そうだ! これケーキね。4種類あるからちゃんと食べて早く治してね」

「昨日も5個くらいもらったんだけど」

「栄養のあるもの(?)選んできたから!」

「……ありがと」

「うんっ」

「とりあえず……」

「うん?」

「お腹から顔、あげてくれない……?」

「はっ」





 春香は最後まで厳重に腹筋エクササイズの禁止を告げて、帰って行った。
 春香は毎日に見舞いに来る。そして最初から最後まで明るく笑って、千早と話す。

 
 千早には春香の気持ちがわかっていた。
 何と言っても春香をかばって千早が被ったケガ。責任を感じないわけがない。


 何度もごめんねという春香に千早は、もういいと諭した。言われれば言われるほど、春香の心配が重く、辛くなっていったからだ。千早は千早で、春香にそんな顔をさせるのは嫌だった。



 次の日から、春香は千早に暗い顔を一切見せなくなった。






 千早は溜息をつきながら、ゆっくり廊下を歩いていた。


 自由が聞かない片足の変わりに両腕が掴んだ松葉杖に体重がかかり、

「重いなあ」

 ポツリと出たつぶやきは、病院の静かな廊下にも響かず、

 そっと、千早の心にだけ跳ね返った。




松葉杖   了




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( 2010/06/11 23:25 ) Category SS | TB(0) | CM(0)
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