忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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6年前 

・いくつかのポップス





 全身が羽根に覆われたよう。


 これほどまでに心は軽くなるものなのだ。


 そう・・・・


 それを境に、私の時間は、きっちりと終わりを指し示すようになった。


 私を常につつんでいた眠気も、今はもうない。






 とある、冬の休日。


「じん、ぐべー、じん、ぐべー、すずがーなーる・・・」
「何?その歌」


 妙な鼻歌を歌いながらテーブルを拭いているラッカに、ヒカリは問うた。


「なんかね、『くりすます』ていうお祭りの歌なんだって」
「?」
「この間ね・・・・」


 ラッカ曰く、先日ネムの図書館で借りる本を物色していたところ、一つの本が目に入った。
 赤い装填に惹かれ、手にとって見ると、タイトルの所はかろうじて、

 『くりすます』

 と読めた。

 開いてみると、どうやら絵本の類らしい。文面もかすれてほとんど読めなかった。
 そこで興味を示したネムと一緒にこの絵本のストーリーを想像してみようということになったというのだ。

 
 まずざっと見、冬になにか特別なことがある。といった趣旨のよう。
 巻末に、『くりすますのうた』と読める部分があり、子供達が輪になって、ちょうど過ぎ越しの祭りのパーティのようにご馳走を並べた部屋で歌っているような場面があった。
 
 その場面からさっするにその絵に載っている文は歌詞であり、「くりすます」という何かのお祭りに歌う歌ではないかと、ネムは推測したという。

「でね、出だしだけなんとか読めたの、じん、ぐべー、じん、ぐべー、すずがなるー、って」
「うーん」
「音程はわたしがつけてみた」
「やっぱり」
「すずがーなーるってところ、過ぎ越しの祭りっぽいよね」

 確かに、『冬』に『鈴が鳴る』のは共通しているとも言える。 

「その前のじん、ぐべーがよくわかんないけどね」
「きっと何か小粋な掛け声なんだよ!ほらいうじゃない、チェストー!とか」
「そ、そうなのかな・・・」
 
 でも、過ぎ越しの祭りに何かみんなで決まった歌を歌うというのは、楽しそうかもしれないと、ヒカリは思った。
 カナなんかノリノリで大騒ぎしそうだ。

「それとね、もう一つね」

 急にラッカのトーンが落ちる。

「何?」
「ちょっと・・・不思議なことがあるの。その本。というか、そのせいで私もネムも読んでみたくなったんだけど」
「どういうこと?」
「実はここに本、あるんだけど」

 椅子にかけてあった自分の手提げから件の本を取り出すラッカ。

「見てみて」

 ヒカリは、ラッカの指し示すページを覗き込んでみた。

 そこには、眠っている子供の枕元にに赤い服の大きな袋抱えたおじさんが立っているという絵だった。

「どろぼう、さん?」
「違う違う」
 珍しくツッコミに回るラッカ

 そのおじさんは枕元に掛けてある子供のものと思しき靴下の中に、何かの包みを入れている最中のようだった。

 まるでそれを期待しているかのように素敵な寝顔で眠っている女の子。

 その寝顔は・・・。

「あ」
「そうなの」

 ヒカリの漏らした声にラッカは同意する。

「ネム・・・だよね?」





「ジングル・ベル、ジングルベル、鈴がーなるー」
「ベタだけど、いいね」
「でしょ?この旋律は大発明ね。この曲さえ流れれば、街はお手軽にお祭り気分に浸れるんだから」
「しかしまあ、今年はそうもいかないよな」
「もう大詰めの段階だもんねー。ま、私は心配なんかしてないけど」
「放任主義だなあ、逆にプレッシャーだよ」
「ふふ」
「・・・なあ」
「ん?」
「待ってるからな。お前は来ないなんて、ナシだぞ」
「・・・・・」
「おーい、聞いてる?」
「・・・・って」
「何?」
「もう一回いって」
「や、やだよ!」


 結局、その日彼はその言葉を言わずに遣り過ごした。




「・・・・」

 ラッカは別のページをめくる。
 一番最後の、「歌」のページだった。

「は、ははは・・・」

 ヒカリは笑った。笑うより他ないかのように。
 それを察してか、ラッカは口を開いた。

「私とネムは、そうだと思ってる」
「うん、私もそう思うな。カナも絶対、そういうはず」
「やっぱりね」

 ラッカは立ち上がった。そしてベランダの方へと歩いていく。
 冬にしては今日はよく晴れている。
 ヒカリの方を振り返らずにポツリと切り出した。

「ヒカリ・・・」
「なに?」
「今年も過ぎ越しの祭り、思いっきり楽しく過ごそうねっ」
「なーに、泣いてるのよお、ラッカ」

 裏返って、今にもくずれそうな声で、それでも精一杯言葉を紡ごうとしているラッカにヒカリは笑いかけた。
 振り返るラッカ。顔をくしゃくしゃにしながら、笑っている。

「そんな、ヒカリこそ、泣いてるじゃない・・・・・」

 ヒカリはもう一度テーブルに置いてある本に目を落とす。


 歌のページ、赤い服のおじいさんと一緒に楽しそうに歌っている子供達。


 羽と光輪がなくても、


 その子供達は、


「ねえ?」

 ラッカとヒカリは二人して笑った。思いっきり。


 笑いすぎてむせたヒカリの背中をラッカはさすったりした。


「そろそろ行こうか?カナ達、まってるよ」





「・・・・よう」
「・・・」
「ひどいもんだろ・・・これつけてないと、あっという間に楽になれるんだと」
「・・・」
「・・・・ごめんな」
「え?」
「・・・・待っててやるっていったのにな」
「・・・」
「せめて、俺が向こうに行くまで」
「絶対に離れないっ」
「・・・・・なーに泣いてるんだよ、お前」
「・・・そっちこそ」

 最後まで、見届けるんだ、私は。






 過ぎ越しの市は、合いも変わらず盛況だ。
 人ごみを縫うように、ラッカたちは進む。

「これこれっ」

 鈴の実の露店の一つにたどり着き、ラッカは慎重に品定めを始めた。

「おっ、ラッカも通になってきたなあ」
 カナは関心しながら、自分も鈴の実を手に取る。
「これなんか、どうよ?」

 カラ カラ

 乾いた心地よい音をたてる鈴の実

 耳を澄ませながら、ラッカは口ずさむ。

「じん、ぐベー、じん、ぐべー、すずがーなーる・・・」
「?何それ?」
「過ぎ越しのうた。今きめた」

 それを聞いて同時に吹き出すネムとヒカリ、お互いの反応が被ったことに双方驚く。

「なんだ?なんだ?ネムもヒカリもカラスが豆鉄砲くらったような顔して?」

 そういった一切のことを受けて、ラッカは微笑み、ウインク一つ。

「ああっ!無駄に可愛い!?」

 混乱の末萌えに目覚めるカナ。






 その日は桃缶を食べさせてあげようと思っていた。
 桃缶は何故か万病の薬のイメージがある。

 今でこそ桃缶なんて簡単に買える、ありふれたものなのだけど。
 むかしから「桃缶は特別」というイメージだけが先行して、私達の中に根付いている。

 じっさい美味しいんだけどねー。

 うんぬん考えながら、病院への道のり。
 カバンともう一つ、スーパーの袋。

 病室にフォークってあったっけ?

 自動ドアを通り抜け、エレベーターに向かう。




 その時だった。
 


 私の世界は、唐突に幕が下ろされた。






 別の冬の日



「あ~だるい・・・」
「レキ、風邪?」
「んーそうみたい」
「桃缶食べときなさい桃缶」
「も、桃缶?」
「そう、昔から言わない?風邪には桃缶って」
「へーえ・・・」
「私は今日仕事遅くなるから、ヒカリに買って帰るよう言っとくから。暖っかくしとくのよ」
「わるいね・・・・」
「お大事にー」






 気がつくと、私は寝ていた。





 寝ているのに、私は気がついていた。






 気がついたのは、私が寝ている私を見下ろしていることだった。






 お父さんや、お母さん、それにお医者さんや、看護師さんが私の周りを囲んでいる。





 急速にその映像さえ、不鮮明になっていく。





 自分が、消えていく、考えが、まとまらない、





 でも、




 わ、たしは、


 まだ、


 やらなきゃいけないことが、ある、のに




 さい ご ま  で    そばに    いるっ    て




 やく      そ















 気がつくと、私は寝ていた。



 他愛のない夢。




 夢をみていないといけないのに、寝ているなんて。



 でも、眠いんだから、しょうがないじゃない・・・・・




 寝返りをうとうと、フワフワの中で身をよじらせたら、



 バリバリと、床がくずれていった。









 皆で歌い、食べ、笑い、
 盛り上がりに盛り上るゲストルーム。

 ネムは一つあくびをして、そっとその場を後にした。










 この絵本だって、

 その絵が、例えレキにしか描き得ない愛情に溢れていたとしても、

 彼女が描いたという保障はない。




 それでも私は信じるよ?




 何年たっても、

 私達がどこにいたって、

 忘れないんだ。こんな風にみんなでいて、笑い、泣き、語りあったことを。





 西の空が光った気がする。





 私は、忘れない。



  ○

    ○

       ○

          ○  

             ○

                 ○


             「むにゃむにゃ・・・もうたべられないよ・・・でもおかわり~」
             「どんな夢みてんだか・・・」
             「もうラッカったら、風邪ひくよ」
                       
              オールドホームが、また一つ年を重ねる。





                       ○   お   わ   り   ○
( 2008/01/01 21:59 ) Category 未分類 | TB(0) | CM(0)
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