忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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一時間SS参加作品 

・爆発


『春香ーっ! 尻ごみするなー! 思いっきりいけー! 見守っているぞー!』

「そんな遠い距離からメガホンで勇気づけられても嬉しくありません!」

「よーしじゃあ春香ちゃん準備はいいかな? 打ち合わせ通りね」

「は、はい」

 助監督の確認を受け、春香は改めて息を呑んだ。


 見渡す限りの石で囲まれた 広い空間。


 アイドル・天海春香はだだっぴろい採石場を見据えていた。





「ゲスト出演ですか?」
「そう、日本の伝統的な娯楽番組アイドル枠としての出演だ」
「すごい!」
「明日朝5時にお前んちに迎えに行くからちゃんと起きてろよ」
「あ、あさ5時? それに私のうちって?」
「そりゃそうだ」

 そう言ってプロデューサーは出演番組の台本を春香に見せた。

「撮影場所に近いからだ」

 台本に並ぶ文字を一度見、そしてもう一度見直す春香。

「こ、これは!」

 日本でもっとも有名な伝統番組と言っても過言ではない……『戦隊もの』の台本であった。







 台本によれば、アイドルオーディションを狙った悪の組織の作戦に捕まったアイドルの一人、天美春香が偶然敵怪人の弱点を知ってしまい、それを戦隊に必死に伝えに来るというシチュエーション。

「えっ、いきなり逃げるシーンから始めるんですか」
「ああ説明していなかったか。映像作品の撮影っちゅうのは台本の流れじゃなくてスケジュールで決まる。だから役者も台本上後のシーンを先に演じるなんてのはザラなんだよ」
「ふえー」
「というわけで敵の怪光線をかいくぐって逃げるシーンだ」
「怪光線っ!?」
「ハハハ、合成で後から足すに決まっているだろ」
「そ、そうですよね」
「光線が着弾した時の爆発はガチだがな」
「ひぃっ」

 そんなこんなで早朝からこの殺風景な採石場に多くの撮影スタッフが集まっており。彼らがてきぱきと仕事をこなしている中、春香は緊張していた。さっき振舞われたとん汁はとても美味しかったが、それでほっこりしたのもつかの間。

『よーい!』

 かかる声とともにカチンコの音が鳴る。春香に課せられた使命はまずまっすぐ走ること。演技も何もない。

「えっ、あっ、はいー!」

 何故か体操の時のように手をあげてから走り始める春香。

 間髪いれず、走るルートの火薬が容赦なく爆発した。

 実際の番組で聞くような『爆発音』ではなく、パーン!と破裂したような音。しかし音の大きさ、衝撃は大きく、春香は身をすくめる。

「ぎゃーーーーーー!! しぬーーーーー!!!」

 アイドルらしからぬ悲鳴をあげながら走る春香。スタッフは転びやしないかと肝を冷やした。しかし地面は採石場、
何もないところで転んでしまう春香はこのような全面躓きそうな所ではやらかさない、というプロデューサーの勝算があった。

 春香が進むたびに爆発は激しくなっていった。全てガチに火柱があがる爆発の中、春香は泣き笑いのような表情を浮かべ走る。やっとのことで所定のゴール地点までたどりついた。ここでその先にいる(設定の)戦隊の面々に敵の弱点を叫ぶのだ。


「目を、目を狙ってー!!!!」


 それは生き物共通で割と弱点だよなあ、と思ったが口にしない程度の処世術は身についているプロデュ-サーだった。





「もー、あんなのは懲り懲りですよお」
「仕事にあんなのもこんなのもありません」
「でもぉ……」

 オンエア前の編集済みVTRが事務所に届き、観賞する運びとなった席で春香はぶーたれていた。

「なんか走っている間にコンクリートのかけらっぽいのがピシピシ当たってきたんですよ!? 顔に!」
「ああいうのは根性で走り抜ければ目だけには届かないように計算されているんだ」
「精神論を計算のうちにいれないでください!」
「まあ、落ち着け」
「うう」
「あそこの現場は結構縁を大事にしてくれる。監督にも『あれだけ景気よく悲鳴をあげてくれたのは久しぶりだ』って喜んでいたぞ。良い印象は次の仕事につながるかもしれん」
「えっ、そ、そんな~」
「ほれ、見てみよう」


『きゃー、うわー』


「……そういえばオールアフレコだったな」
「……そうでしたね……緊張しまくりでした」

『目をねらってー』

「必死な形相と棒読みがシュールさを醸し出しているな」
「も」
「も?」

「もーっ! ふがいないわたしー!!!!!」

「自分への怒りか。いい傾向だぞ!」


 天美春香のやり場のない怒りの爆発に、プロデューサーは満足した笑みをたたえるのであった。




・爆発   了



企画元サイトはこちらです→http://ss1hour.wiki.fc2.com//




おまけ

「こうはならないように気をつけよう」
「当たり前ですよ!」





( 2010/05/15 17:30 ) Category SS | TB(0) | CM(0)
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