忙中ニコマスあり

アイドルマスター徒然

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第六回一枚絵で書いてみm@ster・参加作品  

・雪歩葛藤す

かきますた6

「あ、ゆっきぴょんの!」
「ちょっといいとこみってみたい!」
「あそ~れっ」
「「「タッチ! タッチ! ワンタッチ!」」」

 
 雪歩はしょうもない事で追い込まれていた。

 亜美と真美、そしてみるからにふかふかしてそうな子犬を抱いたあずさ、この三人の音頭はテンポを増していき、雪歩を追い込んでいく。

「はわ、はわわわわわ」

 蒼白な顔は焦燥に苛まれ、やれタッチだタッチだ囃したてられる両の手は、わなわなと震えている。

 ただ、大の犬嫌いとして周囲に認識されているはずの彼女がこうして理不尽な音頭にのっかりわずかながらに目標の子犬ににじり寄っている姿は、普段の彼女を知るもの達にとってはちょっと珍しい光景かもしれない。

「はわ、はわわわわわ」
 まるで機械のように同じ声を上げながら子犬に近づいていく雪歩。
 今、雪歩のぐるぐる回って煙が出てきそうな頭の中にはある一つの葛藤が駆け巡り、わずかながらに犬に触れるという選択肢への要求が勝っていたのであった。
「ほら雪歩ちゃ~ん。こんなに可愛い子犬のなのだもの~、全然怖くないのよ~」
「うわー、目が! 目が~! かわいいよ!」
「がんばれー! ゆきぴょんの勝利の日は近い! 亜美が後ろから押しちゃおーかな!」
「ファー!」
「うっ、あ、ごめん……」
 苛烈に他者の加担を拒否する雪歩に若干後ずさりしてしまう亜美。
 そう、それほどまでに、彼女は自ら、この子犬に触らねばならぬという大義を果たさんと、本能から間欠泉のごとく吹き出るドッグ怖いですぅ穴掘って埋まってこの怖いナマモノがいなくなるのを待ちますぅ一週間はカタいですぅ、という後ろ向きオーラを抑えつけてまで進む根性を、雪歩は発揮していたのだった。




 雪歩は最近、同じアイドル候補生である菊地真と朝に体力づくりの為のジョギングをすることが日課となっていた。しかしその日、少し遅れてやってきた真を見て雪歩は悲鳴をあげた。

「ひゃー! 真ちゃんその、その、い、い」
「へっへっー可愛いでしょ!」
「あぶぶぶぶ」
「ノータイムで泡吹いたー!?」

 卒倒した雪歩を抱き起こし気付いた雪歩が犬を見て卒倒するを2回繰り返したところで、真は犬を一度近くの木にリードをくくってから、雪歩を抱き起こした。
「ハッ」
「親戚の旅行で犬を預かってくれって言われて。てっきり一緒に走れるくらいかなと思ったらこんな子犬で……すぐにボクの方が引っ張っちゃうから歩いてきたんだ。このくらい小さくてかわいいから雪歩も大丈夫かなあ、と思ってたんだけど……誤算だった」
「う、ううん、私の方こそ……」
 チラと犬の方を見れば可愛くひゃんと鳴く。それでも雪歩は条件反射のレベルで悲鳴をあげてしまった。
「朝の散歩はボクの役目なっちゃったからしばらくはこんな感じなんだ……」
「そうなんだ……」
「ボクも、その、こういう可愛い子犬をつれて散歩するってのが、なかなか、いいかなーって、ね?」
 最後の「ね?」は矢印になって雪歩の胸に突き刺さった。
「しばらくはジョギングは御休みってことで」
「まってーーーーーー!!!!!」
 雪歩はまだ全然離れていない真を全力で呼びとめる遠近感で叫んだ。
「わたし、い、いぬ、大丈夫になったかもーーーー!!」
 悲しいかな、雪歩が真と朝のひとときを過ごしたいという想いは、ガチであった。
「ほ、ほら、こんな風にちかづいて」
「わー、雪歩ー!」
「こんな風に撫でてかわいいなんて言ったりもできるよグフォ」
「雪歩ー!」

 慌てて赤信号を飛び出すようなものである。体と心がついていかないうちに、煩悩が暴走した結果雪歩は往来で白目を向く事態となった。





 まず慣れようよ。
 至極もっともな真のアドバイスを受けて、雪歩は特訓に勤しんでいるという現状だった。

 真が子犬を事務所の皆に見せに来た時に、どうすれば雪歩を子犬に触らせれるかということで、亜美と真美の双子が出した妙案がこれだった。

 曰く、
「あずさお姉ちゃんのふわふわーで、ぼいんぼいんーなやさしいふいんきで!」
「ゆきぴょんの犬怖いオーラをちゅーわするのだ!」

 だそうで、藁をもすがりたい雪歩は判断能力を失っていた。

「の、のった!」
「「わーい」」

 これが、この結果である。
 雪歩の両手は、子犬までもう数センチに迫っていた。

(いぬこわいいぬこわいいぬこわいいぬこわいでもまことちゃんとおさんぽしたいおさんぽしたいおさんぽしたいおさんぽしたいおさんぽしたいおさんぽしたい)

 その葛藤の天秤はわずかなバランスでまことちゃんとおさんぽしたいに傾きはじめていた。

「雪歩ちゃん、もうすぐよっ!」
「キター!!!!」
「ここまできたらカウントダウンでいっきにいくしかないっしょー!」
「あそーれ いち!」
「にー!」
「さん!」
「どーん!」

「ファーイ!!!!」

 まさに、煩悩が本能を凌駕した瞬間であった。思い切り突き出した雪歩の両手は子犬に掴みかからんばかりに伸び、そして……!

 それまであずさの胸に顔をうずめて大人しかった子犬が突然雪歩の方を向き、わふ、とひと鳴きした。

「ヒィっ!」

 まさに、本能を凌駕した煩悩を本能が凌駕した瞬間であった。犬の毛先にまで到達していた雪歩の両手は跳ねるように子犬から離れた軌道を描き曲がった。そして開いた形の手のひらは丸く弧を描き、その先にあるモノをつかんだ。
「あらあらいや~ん」
 ボリュームたっぷりの胸を雪歩に鷲掴みにされたあずさは気の抜けた悲鳴をあげた。
「ゆ、ゆきぴょん……」
「ワンタッチじゃなくてパイタッチだよ……」
「……」
 落胆する双子をよそに雪歩は固まっていた。子犬の視線は雪歩を捕えて離さない。そしておもむろに、鼻先に近い雪歩の腕をぺロリとなめた。 
「や」
「や?」
 ぽつりと出た雪歩のつぶやきを思わず真美が聞き返した瞬間、ぐるぐるまわらんばかりの雪歩の目がぐいっと上の方を向いた。
「やわらかい!」

 もう本能なんだか煩悩なんだかわからない叫びを残して、白身の雪歩は轟沈といった言葉がぴったりな感じに、床にどうと崩れ落ちたのだった。





 雪歩がやるといって決めたことなので口出ししないでいた真だったが、あまりの雪歩の必死さに驚き、ちょっと、照れくさくなったんだとさ。



・雪歩葛藤す  了



イラスト てぃーさん → http://klstudio.sakura.ne.jp/
企画元 一枚絵で書いてみmst@er→ http://triskelion.sakura.ne.jp/ichimai-6.htm
( 2010/07/04 21:45 ) Category SS | TB(0) | CM(3)
ノータイムで泡吹いたり「の、のった!」の行の雪歩がダメ過ぎたりで腹抱えて笑いました。純粋に笑える作品をありがとうございました。
[ 2010/07/07 08:15 ] [ 編集 ]
愛!これすなわちパワー!!
雪歩さん、アンタ頑張ったよ…その散り際、一生忘れないぜ…!
と言いたいですねwwww 煩悩まみれの雪歩さん最高ですw
もう真さんへのガチな気持ちであったり、犬への恐怖心であったり、楽しそうな人生で何よりです。
人間パニック状態になると何をしでかすか分からないといいますか。雪歩さん落ち着いて下さいwww
ラストの「やわらかい!」には大変笑わせて頂きましたw
もう何をおっしゃってるんだこの気弱な16歳はwwww

素晴らしいSSをありがとうございました!
[ 2010/07/11 20:12 ] [ 編集 ]
愛のために犬を触る女、萩原雪歩! なんというか動機が不純なのか純粋なのかよくわからない辺りがなんともw 苦手を好きな人のために克服するというのは美しい光景なのですが、暴走した雪歩をみてると 雪歩さん……って感じに 真としては嬉しいのは嬉しいんでしょぅけど この雪歩を制御できるんですかねぇw
[ 2010/07/12 20:31 ] [ 編集 ]
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